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    プロローグ3

    • 2010.03.25 Thursday
    • 14:46

    この季節には不似合いとも言える青色のワンピースを身にまとい、足元も同じ青のハイヒールで決めていた。決して美人と言うわけでない。薄めの眉であるが、目鼻立ちはしっかりしている。真っ赤な口紅に色取られた唇が青の服装と対照的で、見た目の彼女の派手さをさらに強調していた。
    ただ、ふくよかな顔立ちに加え、体つき全体も比較的ぽっちゃりとしていて、それが彼女の愛嬌のある笑顔とあいまって、見た目の派手さとは違い、近づくととても親近感、また安堵感を感じさせられた。さらに、澄んだ瞳はどこまでも黒く、そのまま体ごと引き込まれてしまいそうな錯覚感すら覚えた。鶴見は、大人の女性の魅力を存分に漂わせる、そんな彼女に思わず見とれてしまったが、彼女の「どうかなさいましたか?」という声に、ふと我に返ると、
    「じゃあ、撮りますから……」と言って、彼女と共に三門に向かった。女性は三門を背景にすると、すぐにポーズを撮った。鶴見はカメラを構えた。カメラのファインダーの向こうで彼女はこれ以上は無いという笑顔を振りまいている。それは決して自分個人に向けられたものではないと理解はしているが、鶴見には、それが彼女からの励ましの暗黙の言葉のようにも見えて、落ち込んでいた気分が少し軽くなるのを感じた。
    「はい、それではチーズ!」鶴見は三門を背景に彼女の写真を撮った。中学生時代は写真部であった。構図は完璧だ。写真を撮り終わると鶴見は女性に近づいた。「じゃあ、カメラ返します」「ありがとうございました」女性はカメラを仕舞いつつ、鶴見に礼を述べた。「それじゃあ」鶴見は軽く会釈をすると、女性に別れを告げた。会話を続けようと思えば出来なくもなかったが、元来口下手の彼にはそれ以上彼女と会話を続けるのは実際苦痛でもあった。それに、そろそろ職場に帰らねばならない。
    彼は三門を背にすると、日下門へ向かった。しかし……。昼からの仕事のことを考えると足取りがまた重くなった。鶴見は先ほどの、ファインダー越しに自分に向けられた彼女の笑顔を思い出した。――本当に輝くような笑顔だったそう思うと、鶴見はもう一度彼女の姿を見たいと思い、日下門の手前で三門の方を振り返った。しかし境内をぐるりと見回してみたが、もはや境内に彼女の姿は見えなかった。「まあ、しかし一期一会だから」
     残念な気持ちになると、彼は再び憂鬱な気分に苛まれた。そして、前にもまして重く感じられる足を引きずると、職場へと向かった。

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